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猫の尿道閉塞

文案:草加 監修:山下、宍倉

2020.3.4

猫

はじめに

 尿は腎臓で産生され、尿管を介して膀胱に貯留されます。膀胱に貯留した尿が体外に排出されるときの通り道となる管状の器官を尿道と言い、何らかの原因によって尿道が閉塞してしまうことを尿道閉塞といいます。
 尿道が完全に閉塞した場合、症状は急激に進行します。治療介入が遅れた場合には腎臓の機能が著しく障害される、自分の力で排尿ができなくなるなどの後遺症が一時的または永続的に残ることがあり、最悪の場合、膀胱・尿道の破裂や急性腎不全による尿毒症によって死に至ります。比較的よくみられる疾患ですが、早期に対応する必要のある救急疾患です。

原因

 尿道は動物や性別によって構造や走行が大きく異なりますが、特にネコではメスの尿道が比較的太く直線的であるのに対し、オスの尿道は細く会陰部でS字状に湾曲するために構造的に閉塞を起こしやすいと言われています。腎臓や膀胱内で形成された結石や、剥がれ落ちた細胞などの蛋白成分によって形成される栓子、それらが通過した刺激によって生じる狭窄などが主因となり閉塞を生じます。また、尿路にできた腫瘍が原因となることもあります。
 結石や栓子ができる原因は遺伝や体質といった先天的なものから、食事、飲水量、運動量といった後天的な要因まで様々です。さらに二次的に生じる肥満や感染なども複合的に発症を招いていると考えられます。特に食事中のミネラル成分や飲水量などの栄養学的な要因は結石の形成に直接的に影響するため注意が必要です。膀胱憩室などの奇形の一種が素因となる場合もあります。

症状

 ほとんどの場合、かなり強い尿意を示します。血尿、頻尿、尿が出ない、尿がぽたぽた滴る、不適切な場所での排泄などといった排尿に関連する症状に加え、いきみ、腹痛、辛そうに鳴く、落ち着かない、歩き回る、隠れる、元気や食欲の低下、嘔吐や軟便などの症状を示すこともあります。これらの症状のいくつかが同時にみられる場合は特に注意が必要です。また、初期症状を見過ごしてしまうと腎機能が急速に傷害され、急性の尿毒症によって活動性が低下した結果、排泄行動の異常を発見しにくくなることもあります。進行した尿毒症は意識が朦朧とし、痙攣発作や致死性の不整脈などを引き起こすなど非常に重篤な症状を示します。

診断

 問診、触診などで尿道閉塞の疑いが強い場合は腹部のレントゲン撮影、超音波検査などを行い膀胱・尿路の状況と塞栓子の確認を行います。腎臓や全身への影響を調べるために血液検査や心電図検査なども必要です。閉塞解除後に尿が採取できたら尿検査によって結石・結晶の種類や細菌感染の有無を判断し、治療の選択を行います。

治療

 尿道内の塞栓子が原因の場合は緊急処置として、尿道カテーテルや生理食塩水などを用いて塞栓子を膀胱内に押し戻します。この処置は疼痛を伴うため、鎮静麻酔下で行います。膀胱内にまでカテーテルを挿入し尿路が確保できたら、腎機能が回復するまで集中的な点滴治療を行います。長期間過度に拡張していた膀胱は正常な機能を失い排尿障害をきたしているケースが多いため、膀胱機能が回復するまではカテーテルを入れたままで治療を行います。これら閉塞解除後の入院治療は、重症度にもよりますが、一般的に数日から10日以上を要します。
 これらの治療により改善が得られた場合は、食事や運動などの生活習慣、環境の改善を行い、内科的に再発防止を図ります。細菌感染を伴う場合は抗生物質の投与を行います。結石の種類によっては食事療法で完全に溶解させることも可能です。
 これらの処置によって閉塞の解除ができない場合や、再発を繰り返す場合、重度の狭窄や溶解が不可能な結石の存在により再閉塞のリスクが高い場合などは外科手術の適応となり、閉塞予防手術を行います。これはオスの尿道の細く蛇行する部分よりも手前の、より膀胱に近い部分を会陰部に直接開口させるもので、会陰尿道瘻設置術と呼ばれます。メス同様の尿路構造となるため尿路感染等のリスクは上昇しますが、生命に関わるような尿道閉塞のリスクを著しく軽減することができます。

獣医師から

 猫の尿道閉塞は決して珍しい病気ではありません。特に寒くなると運動量や飲水量の低下からか発症が明らかに増えるため、冬場はより注意が必要とされています。尿道閉塞は発症、進行してしまうと命に関わる病気であり、早期の対応が必要となりますので、上記のような症状に気が付いた場合にはできるだけ早く獣医療機関を受診してください。
 一方で、尿道閉塞の大部分は比較的簡単に予防することが可能です。去勢手術を適期に行い、肥満にさせず適正体重を保ち、定期的な尿検査で尿路結石リスクを把握することは決して難しいことではありません。尿に結晶成分が認められたとしても適切な療法食を選んであげることで結石にまで悪化させることなく治療することもできます。普段からトイレの回数や排泄にかかる時間やその様子などを意識して観察することも異常に気付くためにとても大切です。
 残念ながら尿道閉塞を発症してしまう患者様の多くは検診ではなく救急外来にてその診断が下ります。発症前に検診と予防策を講じていればと悔やまれるケースも非常に多く、改めて検診・予防の重要性を知っていただきたいと思うばかりです。


「予防の1オンスは治療の1ポンドに値する」
“An ounce of prevention is worth a pound of cure.”
Benjamin Franklin


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