胃拡張胃捻転症候群(GDV)

 胃拡張胃捻転症候群はグレートデン、ジャーマンシェパード、ドーベルマン、ゴールデンレトリバー、ラブラドールレトリバーなどの胸が縦に長い大型犬種や、日本国内で飼育頭数の多い小型犬では、ミニチュアダックスフンドに発生しやすい病気です。中高齢での発症が多い傾向にあります。吐きたそうで吐けない、元気がない、ぐったりしている、お腹が張っているなどの症状が挙げられます。様々な原因で胃の拡張が生じた後にねじれてしまい、ガスが発生し、さらに拡張した胃が、腹部から心臓に向かう血管を圧迫し灌流障害を生じます。結果的に心臓から送り出される血液量が低下し、不整脈、ショック、血行障害が起こるため、迅速な治療が求められます。

GDVの治療

 治療はショック状態を立て直すための内科治療と、捻転した胃を元に戻し再発を防ぐために胃壁を腹壁に固定する緊急手術(胃腹壁固定術)が行われます。ただし、重度の不整脈などを生じ手術が間に合わない場合や、手術の甲斐なく亡くなってしまう場合も残念ながらあり得ます。

GDVの予防

 この病気を予防するためには、食事を小分けにしたり食後の激しい運動を控えたりすることが有効であると言われていますが、完全に予防できるものではありません。
 そのため、将来的に発生するGDVのリスクの軽減を目的とし、予防的に胃腹壁固定術が行われます。
 高リスクの犬種については、積極的に予防的手術を検討することが大切です。当院では、シェパードなどの好発犬種の避妊・去勢手術の際に予防的に胃固定の手術を行うことができます。通常の開腹術では手術によるダメージが気になる場合は、腹腔鏡を用いて最小限の切開で同様の手術を実施することも可能です。

予防的胃腹壁固定術のリスク

 予防的胃腹壁固定術は一般的に安全な手術ですが、麻酔や手術に伴うリスクは存在します。また固有の合併症として、消化管の動きが悪くなることで生じる嘔吐や食欲不振、稀ですが縫合部の壊死や穿孔による腹膜炎や膿瘍形成などがあります。
 予防的胃腹壁固定術を行っても、胃にガスが溜まって過剰に膨らむ「胃拡張」自体は防ぐことが出来ません。しかし、上記のように致死的な状況に陥る「胃捻転」は防ぐことが可能です。

獣医師より

 GDVは突如発症し、放置すると数時間で死亡してしまう緊急疾患です。
 予防的胃腹壁固定術はGDVのリスクを大幅に低減できるというメリットがあり、実際に手術が実施された場合は死亡率が29倍下がったと報告されています。
 大型犬種や、小型犬種であっても胸が深いダックスフンド・ミニチュアピンシャーなどを飼育されている方は、若いうちにぜひ一度ご相談ください。