社会化とは

 他の動物や人、見慣れないもの、聞きなれない音など様々なものを受け入れて順応していくことを「社会化」と呼びます。特に犬では生後3週齢~14週齢(生後3カ月半)、猫では生後2~9週齢が「社会化期」と呼ばれており、この期間に経験することが子犬・子猫の将来の行動や性格に大きな影響を与えます。

 社会化期にはまず、親や兄弟と接して、犬・猫同士のコミュニケーション方法を学びます。その後新しい飼い主さんのもとで様々な経験を積んでいくことにより、人の社会に対する順応能力が増していきます。この時期に騒音や人、他の動物、家以外の場所など様々な環境だけでなく、将来のためにシャンプーや爪切り、耳掃除、点眼、ブラッシングなども経験しておくと良いでしょう。

 子犬・子猫の発育速度はそれぞれ異なるため、過度な不安を感じるような体験にならないように注意し、一歩ずつゆっくりと社会化トレーニングを進めましょう。また、怖がっている場合は無理をせず、嫌な思い出とならないようにご褒美(遊び・食べ物・愛情)をあげることが大切です。

体を触れるようになりましょう

 体中どこでも触れるようになることは、飼い主さん自身で健康チェックやケアを行えるようになるだけでなく、信頼関係構築にも繋がります。

  1. 子犬・子猫が興奮してしまう時間や場所を避け、落ち着けるような状況を作ります。興奮している時には、まず十分に遊んでエネルギーを発散させてから行いましょう。
  2. 落ち着いてきたら体中をゆっくりとチェックしていきます。
  3. 静かな口調で優しく声をかけながら、撫でられて気持ちのいい耳の付け根やあご、首周りから始めて少しずつ背中やおなか、口、手足、尻尾など嫌がりやすい箇所へと広げていくのがポイントです。
  4. 嫌がる場所があったら無理やり触らず、最初はご褒美をあげながら触るようにしましょう。
  5. 嫌がらずに触れたあとには、必ずご褒美を与えるようにしましょう。

音・人に慣れましょう

 愛犬の困りごとで多いのが、インターホンの音や宅配便の配達の人に対して吠えてしまうことです。過度に怯え、隠れてしまうネコちゃんも少なくありません。子犬・子猫のうちにインターホンの音や来客に慣れておきましょう。

  1. 「知らない人が来る怖い合図」と学習する前に、インターホンの音を録音して何度も聞かせ、何も起こらないことを経験させましょう。
  2. (犬)インターホンが鳴ったら、ハウスや待ての指示をします。成功できたらご褒美をあげて褒めましょう。慣れてきたら、指示を与えずに吠えなかった場合も褒めましょう。
  3. 来客がある場合は、まずはにおいを嗅いでもらい、慣れてきたらおやつをあげてもらいましょう。

はみがき練習

 ワンちゃん、ネコちゃんの歯は生後3週間ごろに乳歯が生え始めます。生後4~6カ月で永久歯への生え変わりが始まり、7カ月~1年で永久歯が生えそろいます。それまでにはみがきを習慣づけましょう。

 歯のトラブルはとても多く、そのほとんどが歯周病です。歯周病を予防する為には、はみがきをすることが非常に大切です。しかし、口の中に歯ブラシを入れられることを嫌がる子は少なくありません。無理に磨こうとすると、口を触られること自体を嫌がるようになることも多いので、徐々に練習していきましょう。はみがきができるようになったら、最低3日に1回、できれば毎日行う事が理想です。

はみがき練習

はみがきの練習方法

  1. 耳の付け根やあご、首周りのスキンシップから始め、リラックスしたらゆっくりと怖がらせないように口元を触ってみましょう。逆の手で撫でながら行うと安心します。
  2. 口元を触らせてくれたらご褒美をあげて褒めましょう。急に口元を触られると恐怖で反射的に噛んでしまう場合もあります。怖がる様子があればすぐに止めましょう。
  3. 口元を触れるようになったら歯にも触れてみましょう。最初は唇をめくり、歯を優しくタッチする程度で構いません。慣れてきたら指で歯をなぞります。
  4. おいしいはみがきペーストを指につけ、舐めさせながら少しずつ口周りを触ります。これにより口周りを触ることに良いイメージをもたせましょう。
  5. 慣れてきたら指で歯を磨いてみます。最初は短時間、慣れてきたら少しずつ時間を延ばします。
  6. 指で慣れてきたら、指に巻いたガーゼやはみがきシートなどで磨いてみます。まずはここまで頑張りましょう。
  7. ガーゼやはみがきシートにも十分に慣れたら、歯ブラシでチャレンジしてみてください。

※ガーゼやシートは間違えて飲み込まれてしまわないように注意してください
※歯のサイズに合った歯ブラシを使用しましょう。

 はみがきに慣れるためには、嫌がらないようにゆっくりステップアップすることが重要です。急ぐ必要はありませんので、例えば1を1週間、2を1週間といった具合に、少しずつ慣れさせながら時間をかけて行いましょう。
 当病院では個別のはみがきレッスンも行っています。お気軽にご相談ください。

点耳・点眼練習

 顔を触れるようになったら、点耳・点眼の練習をしましょう。薬液が冷たいとびっくりしてしまうので、手で包んで人肌程度に温めます。正面から薬をつけようとすると怖がってしまうため、後ろ向きに座らせて行いましょう。

点耳のやり方

  1. 耳介を少し上に引っ張ります。犬猫の耳道はL字型になっているため、少し上に持ち上げることで耳道がまっすぐになり、薬が入りやすくなります。
  2. 耳介に沿わせて点耳をします。薬を入れた瞬間に頭を振ると薬が飛んでしまうので、頭を振らせないようにしましょう。
  3. 耳の付け根をやさしくマッサージして、点耳薬をなじませます。
点耳のやり方

点眼のやり方

  1. 目薬を持っていない方の手で後ろから顎の下を持ち、ゆっくりと顎を少し上に向けます。
  2. 目薬を持つ手を犬猫の頭の上において支点をつくり、手がぶれないように固定します。薬指や小指の側面全体を上まぶたに当て、やさしくそっと上げます。
  3. 正面からでなく、後ろ側から1滴入れます。
点眼のやり方

 ご褒美を使いながら、耳や目を触られることが嫌いにならないように練習しましょう。

最後に

 大切な家族との生活がより楽しく豊かになるように、飼い主様とワンちゃん、ネコちゃんの絆をつなぐお手伝いをさせて頂きます。日頃のケアや些細なお悩みなど、どんなことでもお気軽にご相談ください。また、当院ではパピークラスも行っておりますので、ご興味がありましたらぜひお電話ください。