動物の輸血

 動物でも病気や手術に際して輸血が必要になる場合があります。犬なら犬、猫なら猫同士で血液型の合う血を輸血することで命をつなぐことができます。

犬の血液型

 犬の場合、血液型は9種類以上に分類されますが、輸血時に問題となるのはDEA1.1という血液型です。DEA1.1(+)なのかDEA1.1(-)なのかを事前に検査で判定しておくことで、緊急時に速やかな輸血を行えます。愛犬の血液型がわからない場合には1度調べておくとよいでしょう。

猫の血液型

 猫の血液型はA/B/ABの3種類です。国内では多くの猫はA型なので、稀に存在するB型やAB型の猫では輸血をしたい時にドナーがいないという事も起こり得ます。スコティッシュフォールド、アビシニアン、ブリティッシュショートヘアなど、洋猫ではB型/AB型に当てはまる場合があるので、いざという時に備えて血液型を調べておきましょう。

献血ドナー

 動物たちの寿命が延びていることもあり、輸血の需要は年々高まってきていますが、人の医療とは異なり、動物の医療には血液製剤を供給する全国的な組織はありません。また、病院間での血液製剤の移動は法律で禁じられています。したがって、各動物病院が独自にドナーを集めて献血・輸血を行っているのが現状です。緊急時に迅速に輸血を行うためには、血液製剤の在庫をストックしておく必要がありますが、血液製剤には使用期限があるため定期的に献血をしてくれるドナーさんの協力が不可欠です。健康で一定の条件を満たしていれば、ドナー登録ができますので、是非ご協力をお願い致します。

献血ドナー

犬ドナー条件

● 1~7歳
● 10㎏以上
● 予防済み(ワクチン、フィラリア、ノミダニ)

猫ドナー条件

● 1~7歳
● 4㎏以上
● ワクチン接種済み
● 完全屋内飼育

※過去に輸血を受けたことがある、または妊娠・出産経験のある場合はドナーの対象外です

献血の流れ

① ドナー登録にあたり事前に血液検査を行い、血液型や血液感染症がないかを調べます。
② 献血当日は安全のために朝ごはんを抜いていただき、できるだけ緊張せずに献血できるように予め鎮静剤を飲んでご来院ください。
③ 頸静脈より献血用の採血を行うため、採血部位(首の前側)の毛刈り、消毒を行い無菌的に採血をします。安全に素早く採血を終わらせるために献血中は追加で軽い鎮静剤の投与を行うので、血圧や心拍などを分刻みで確認しています。
④ 献血後には点滴をして、採血で失った量の水分を補います。
⑤ 当日中に帰宅可能ですが、念のため数日は安静にすごしてください。

献血の流れ

献血頻度:初年度は年に2回。2年目以降は年に3回を上限に献血をお願いしています。
採血量:猫40ml、犬200mlが平均的な採血量ですが、体重により調整をしています。

輸血副反応

 輸血前にはドナーの血液と輸血を受ける患者の血液を用いて交差適合試験を行います。血液型が同じでも適合試験で凝集などの異常な結果が認められる場合には不適合輸血になるため原則として輸血が出来ません。また、適合試験で適合が確認された血液であっても、輸血時に副反応が出ることがあります。副反応として免疫反応が起きると、軽度であれば嘔吐や元気消失だけですむこともありますが、重症例では発熱、不整脈、虚脱が認められることがあります。そのため、輸血は少ない流量から始めて副反応が見られなければ慎重に増やしていきます。また、輸血中には頻繁にバイタルモニターを行い、すぐに体調の変化に気付けるようにしています。

実際の輸血症例

ラブラドールレトリバー 避妊雌 28㎏
 献血ドナーとして2歳~6歳までの間に計9回の献血にご協力いただいた患者さんです。10歳の時に肝臓癌からの出血がとまらなくなり、緊急手術をすることになりました。癌からの出血が多かったので手術に際して輸血をうけましたが、輸血のおかげで安定した手術を行うことができ、肝臓の癌もすべてとりきることができました。2年経過した現在も元気に過ごしています。

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