リンパ腫とは白血球の一種であるリンパ球が腫瘍化する病気であり、いわゆる「血液のがん」です。リンパ腫は猫の腫瘍性疾患で最も発生頻度が高いことが知られています。ただし、リンパ腫にも様々な病型があり、発生部位や症状、悪性度、進行速度、治療法、予後などはそれぞれ大幅に異なります。今回紹介する「猫の高分化型消化器型リンパ腫」は、猫のリンパ腫全体の10-13%を占め、中高齢の猫において良く遭遇します。なお、猫のリンパ腫では猫白血病ウイルス(FeLV)の感染が発生に関与するものがありますがこのタイプでの関与は否定的です。
一般に腫瘍細胞は未熟(未分化)なほど細胞の分裂、増殖のスピードが速く悪性とされています。「猫の高分化型消化器型リンパ腫」は文字通り、消化管に限局したリンパ腫細胞の増殖があり、その腫瘍細胞は比較的成熟(=高分化)し、増殖活性の低い傾向にある腫瘍です。このため慢性かつ緩徐に進行する消化器病といった特徴を示し、初期症状に気付きにくく見過ごされてしまうことが少なくありません。しかし、他の多くの腫瘍と異なり、適切な治療を行えば85%以上の確率で症状の改善が得られ、良好な予後が得られると知られています。完治は困難ですが、早期発見と適切な治療によって寛解=生活の質を落とすことなく寿命を全うできる可能性があるのです。