急性腎障害(AKI)は、何らかの原因で腎組織が障害され、腎機能が急速に低下していく状態です。腎臓の主な働きは血液を濾過し体液の恒常性を保つことであり、AKIで腎臓の機能が障害されると血中老廃物の過剰な貯留(尿毒症)や電解質異常、重度の脱水など致死的な状況が起こり得ます。
AKIの原因は、腎前性、腎性、腎後性に大別されます。
腎前性とは、腎臓への血液供給が不十分になることで腎機能が障害される病態です。大量出血や重度の脱水、全身麻酔による血管拡張作用による腎血流量低下、心臓病による心拍出量の低下などによって起こります。
腎性とは、腎臓そのものに損傷が起こることで腎機能が障害される病態です。細菌感染による腎臓広域の障害(腎盂腎炎)や、腫瘍や中毒などによる尿細管(原尿の再吸収や分泌をおこなう組織)の障害、自己免疫疾患や感染症などによる糸球体(微細な血管が集まった球状の組織で、血液をろ過する作用をもつ組織)の障害などが代表的です。なかでもネズミなど野生動物から感染するレプトスピラ感染症は致死的な腎障害を起こすため、自然豊かな環境で過ごす犬はレプトスピラ対応のワクチンを打つなどの予防措置がすすめられます。
腎後性とは尿管、膀胱、尿道などの下部尿路系の異常によって腎機能が障害される病態です。結石による尿路の閉塞、腫瘍による尿路の圧迫、狭窄などにより、尿の出口がふさがれることによって生じます。若齢~中年齢の猫で好発し、早期の手術介入が必要とされます。
急性腎障害(AKI)は早期に治療をおこなうことで致死的な状態を回避できることがありますが、深刻な急性腎不全へ進行して死に至るケースもままあります。また、腎機能は完全に回復せずに慢性腎臓病に移行する場合も少なくありません。