インスリノーマ
インスリノーマ
診断
症例
イタリアングレーハウンド 10歳 去勢雄
稟告
発作の頻度が増えた、1ヶ月前から後肢虚脱
経過
初診時に後肢の虚脱が認められたものの、神経学的な異常はなし。
血液検査において血糖値は48g/㎗と低値を示し、修正インスリン・グルコース比(AIGR)は109.8と著しく上昇していた。超音波検査では、膵臓の右葉に10.2×7.9×6.9㎜の腫瘤が観察された。
第2病日に行ったCT検査では膵右葉に約1cmの腫瘍病変及び周囲2つのリンパ節の腫大が認められた。
インスリノーマを疑い、来院後からプレドニゾロン投与(0.3mg/kg,1日2回)および少量頻回の給餌を行った。
第4病日に膵臓腫瘍の摘出手術を実施した。
開腹時の肉眼所見では膵右葉に白色腫瘤が確認され、病理組織学的検査においてインスリン抗体染色に陽性を示したため、インスリノーマと診断。
術後は膵炎防止のためにブレンダZ(0.4mg/kg)およびガベキサート(5mg/kg/day)を持続点滴し、術後6日で経過良好につき退院とした。退院時のインスリンは36.14μU/mlであった。
術後の経過を観察する中で低血糖による神経症状が認められなかったため、プレドニゾロンを漸減し、術後25日目に投与を中止した。
術後52日目のインスリンは13μU/ml、術後69日目のインスリンは13.26μU/mlであり、現在もインスリノーマによる低血糖の症状は認められず経過観察中。
術前の腹部超音波検査
術前の腹部CT検査
術中の肉眼所見
病理写真
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診断名
インスリノーマ
組織所見
腫瘤は多型性を呈する細胞の腫瘍性増殖からなります。腫瘍細胞の異型性は中程度~やや強く、核分裂像は少数です。核分裂指数(高倍率10視野合計)は1です。腫瘍細胞は繊細な毛細血管結合組織に区画される大小不明瞭な胞巣構造を形成しながら、胞巣内で充実性に増殖しています。腫瘍細胞の細胞質内には微細顆粒状物質も認められます。腫瘍細胞は線維組織の増生を伴いつつ、膵外分泌細胞を巻き込みながら浸潤性に増殖しています。本標本上マージン(-)であり、脈管内浸潤像も認められません。