上記のような急性の腹痛、嘔吐、食欲不振など急性膵炎を疑う症状を示し、かつ腸閉塞や胆囊疾患など同様の症状を示す病気を除外することで診断します。
血液検査では白血球数の上昇や、急性炎症蛋白(CRP)の上昇、アルブミンの低下などが認められます。外注検査にはなりますが、高感度の検査として膵特異的リパーゼ免疫活性の測定も頻用されます。
腹部レントゲン検査では消化管内異物や腸閉塞の除外、腹膜炎所見の有無などを判断します。短時間で緊急性の判断や障害部位のスクリーニングを行える非常に有用な検査です。
腹腔内の詳細な評価には腹部超音波検査を用います。高性能な超音波検査機器と熟達した画像診断医は膵臓の異常を高感度で検出します。ただし、動物が痛みや興奮で暴れてしまう場合や、被毛がある場合、15kgを超える体格の場合などでは超音波検査の精度は著しく低下します。正確な検査のために、毛刈りや鎮静処置を行います。
急性膵炎では膵臓の浮腫・腫大や周囲の腹膜炎像、腹水の貯留などが認められます。二次的な総胆管閉塞や消化管への炎症の波及もよく見られる所見です。膵嚢胞が認められる場合や、感染性の膵炎が疑われる場合には膵生検が必要となることもあります。
さらに近年、米国コロラド州立大学から、造影CT検査における膵臓の評価が犬の急性膵炎の診断や重症度の判定に有用だと報告されました。造影CT検査では超音波検査で見落とされやすい合併症である門脈血栓などを高感度で検出することができます。人の膵炎診断にはCT検査がゴールドスタンダードであり、検査麻酔によるリスクよりも早期の確定診断によるメリットが上回ると判断された場合には、当院では即日CT検査を行うことが可能です。