ワクチンについて

 ワクチンには犬で接種が義務付けられている狂犬病ワクチンと任意で接種する混合ワクチンがあります。混合ワクチンは感染力や致死率の高さからすべての動物への接種が推奨されているコアワクチンと、生活環境や流行状況によって推奨されるノンコアワクチンに分けられます。

 ワクチンを接種すると発症を予防する効果のほかに、もし発症してしまった場合に重症化しにくくなったり、他への感染の拡大を防いだりする効果が期待されます。発症を完全に予防できるわけではありません。

コアワクチン ノンコアワクチン
  • 犬ジステンパーウイルス感染症
  • 犬パルボウイルス感染症
  • 犬伝染性肝炎(犬アデノウイルス1型)
  • 犬伝染性喉頭気管炎(犬アデノウイルス2型)
  • 犬パラインフルエンザウイルス感染症
  • 犬コロナウイルス感染症
  • 犬レプトスピラ感染症
  • 猫ウイルス性鼻気管炎(猫ヘルペスウイルス)
  • 猫カリシウイルス感染症
  • 猫汎白血球減少症(猫パルボウイルス)
  • 猫白血病ウイルス感染症
  • 猫クラミジア感染症

副作用

 ワクチン接種後、ごくまれに副作用がみられることがあります。主な副反応は、注射した部分の痛み・炎症、関節や筋肉の痛み、疲労・倦怠感、寒気、発熱等です。これらの症状は通常数日以内に治まります。稀に起こる重大な副反応として、アナフィラキシーショックがあります。
 下記の症状に気付かれた場合は、すぐに病院にご連絡ください。

① アナフィラキシーショック

 接種後60分以内、多くは5分以内に約0.07%の確率で発症します。
 意識低下、呼吸困難、歯茎や舌の色が白くなる、ふらつき、嘔吐、失禁、流涎、失神、死亡

② 遅延型アレルギー反応

 約83%は接種後12時間以内に発症し、3-4日目でも発症します。
 顔の腫れ、発疹、痒み、嘔吐

③ 後遺症(数か月~数年)

 免疫介在性溶血性貧血、免疫介在性血小板減少症、多発性関節炎などの免疫疾患
 猫の注射部位肉腫(悪性腫瘍)

 接種後15 分(過去にアナフィラキシーを含む過敏症やアレルギー症状を起こしたことがある場合は 30 分)は、院内にて体調を確認いたします。帰宅後もひとりでの長時間の留守番は可能な限り避けてください。接種後の2~3日間は激しい運動は控え、安静にお過ごしください。お散歩等、通常の生活は問題ありません。1週間は副反応の出現に注意してください。接種部位を揉んだりこすったりしないように注意してください。

注意事項

 以下のいずれかに該当する場合は、必ず獣医師に確認の上、予防接種を行ってください。
⚫ 体調が悪い(当日または数日以内に発熱・食欲不振・咳・嘔吐・下痢などの症状があった)
⚫ 抗凝固療法を受けている、血小板減少症または凝固障害がある
⚫ 過去に免疫疾患の診断を受けたことがある
⚫ 副腎皮質ステロイド剤や免疫抑制剤などを服用している
⚫ 心臓、腎臓、肝臓、血液疾患、けいれんなどの基礎疾患がある
⚫ ワクチン、薬剤によって、過敏症やアレルギーを起こしたことがある
⚫ 妊娠の可能性がある

ワクチン抗体価検査について

 狂犬病ワクチンは毎年の接種が義務付けられていますが、混合ワクチンはそうではありません。犬と猫のワクチネーションガイドライン(世界小動物獣医師会WSAVA)により、「主要な3種コアワクチンの再接種は3年以上の間隔をあけること」とされています。多くの成犬・成猫においてコアワクチンによる抗体の持続は数年にわたり維持されることが確認されているため、むしろ間隔をあけることが推奨されているのです。ただし抗体の実際の持続期間は個体により差が生じます。そこで、抗体価検査により不要なワクチン接種を防ぐとともに適切なワクチン接種時期を見極めることができます。
 レプトスピラなどのノンコアワクチンについては抗体持続期間が短いため、生活環境などから感染リスクが高い場合などにのみ1年毎の接種が推奨されます。

子犬・子猫の混合ワクチン接種について

 6~8週齢で接種、その後は2~4週ごとに16週齢以降まで接種することが推奨されます。また、6カ月または1歳齢で再接種(ブースター)します。
 2歳以降の接種は上記成犬・成猫のワクチネーションガイドラインに従います。

最後に

 大切なペットの健康を守るためには感染症の危険を防ぐことが大切です。歳を重ね、免疫が低下している子ほど重要性は高く、接種することは寿命延長につながります。災害時に施設に避難する際にワクチン接種の証明が必要になる場合もあります。これから一緒に長く生活するためにも定期的な予防接種を行いましょう。ただしワクチン接種についてご不安がある場合には何でもお気軽に獣医師に相談してください。