動物に寄生する寄生虫の種類

 動物に感染する寄生虫には、体表面(皮膚、被毛、耳、眼、毛包)に寄生するノミ・ダニなどの外部寄生虫と、体内に寄生する線虫、条虫などの内部寄生虫の2種類があります。
 これらの寄生虫は宿主の健康を害するだけでなく、命を脅かすような病気を媒介することが知られています。動物たちとご家族が共に健やかな生活を送れるよう、定期的な予防・駆虫を行いましょう。

外部寄生虫

 ノミは暗く温かく通気が悪い場所を好むため、室内の部屋の角、カーペット、ソファーやベッドに生息します。マダニは草むらやヤブの中に潜み、近づいた人や動物に寄生します。室内で飼われている犬猫であっても、人などに付着して室内に持ち込まれることもあるため注意が必要です。 ノミやマダニが活発に活動するのは5月~11月で、秋から冬は卵から孵化した幼ダニや若ダニが活動を始める時期でもあります。そのため、当院では年間での予防をおすすめしています。

ノミやマダニに吸血されることによって犬猫が発症する可能性のある疾患について

ノミ刺咬症
 ノミに刺されることで起こる皮膚炎です。ノミが吸血することによる刺激と、唾液に含まれる成分に対する炎症反応により刺咬部位に強い痒みが引き起こされます。症状の強さはノミの寄生数に比例し、大量寄生・吸血によって貧血を伴うこともあります。
ノミアレルギー性皮膚炎
 ノミの唾液に含まれる成分に対してアレルギー反応を起こし、刺咬部位以外にも強い痒みを生じる皮膚炎です。特に腰背部に脱毛や湿疹が集中する傾向があります。アレルギー反応が主たる要因であり、たとえノミ1匹による刺咬でも全身に重度の皮膚炎が起こり得ます。
犬バベシア症
 マダニによって媒介されたバベシア寄生虫が赤血球を破壊し貧血などを引き起こす病気で、熱が出たり食欲が低下したりします。感染が重度になると、死に至ることもある感染症です。
猫ヘモプラズマ症
 ダニの吸血や猫同士の喧嘩が原因となりヘモプラズマ寄生虫が赤血球を破壊し貧血などを引き起こす病気で、熱が出たり食欲が低下したりします。

人間が発症する可能性のある主な病気(人獣共通感染症)について

 動物と人との間でうつる病気のことを「人獣共通感染症(ズーノーシス)」と言い、動物から人にうつるだけではなく、人から動物にうつることもあります。この人獣共通感染症から人と動物を守るため、病気を正しく理解し予防することが大切です。
猫ひっかき病
 Bartonella henselae菌によって引き起こされる人獣共通感染症です。ノミが媒介し、感染した猫に引っかかれたり噛まれたりすることで、その部位が化膿したり、リンパ節が腫れて発熱や頭痛などの症状を引き起こします。感染猫には症状がほとんどでないので発見が難しく、飼い主様に症状が出るまで気づかれないことが一般的です。日本では猫の9~15%が菌を保有しているとされています。特に野良猫や外猫での保有率が高い傾向にあります。予防には、猫との接触後の手洗い、定期的なノミの駆除、猫を室内で飼育することが効果的です。感染が疑われる場合は、速やかに医療機関を受診してください。
重症熱性血小板減少症候群(SFTS)
 2011年に中国で報告されたSFTSウイルスによる人獣共通感染症です。SFTSはマダニから人や動物に感染するだけでなく、SFTSを発症した動物による咬傷や、感染動物の血液への接触などによっても人に感染します。発症した場合は発熱や食欲低下、消化器症状などが認められ、死に至る可能性もあります。致死率は20%ともいわれており、非常に危険な感染症です。2013年に国内で確認された以降、年間に60~90人ほどの患者が報告されています。
 予防には、マダニ対策が重要です。野外活動時に長袖・長ズボンを着用し、肌の露出を避けることや、マダニ忌避剤を使用することが推奨されます。また、動物に定期的にノミ・マダニ駆除薬を使用し、帰宅後には体をチェックしてマダニが付着していないか確認しましょう。感染の疑いがある動物には直接触れず、もし接触した場合は手を洗うことが重要です。症状が現れた場合は、速やかに医療機関を受診してください。

内部寄生虫

 内部寄生虫は、動物の体内に住み着く有害な生物です。犬や猫にも多く見られ、消化管や肺、心臓など様々な臓器に寄生します。寄生されても無症状の場合もありますが、重度の感染では下痢、嘔吐、体重減少、貧血などの症状が現れ、深刻化すると命に関わるケースもあります。
寄生虫の感染経路は多様です。最も一般的なのは、寄生虫の卵に汚染された土をなめたり、卵が付着した生肉を食べたりすることで卵を飲み込んでしまうケースです。また、ノミなどの外部寄生虫が媒介することもあります。さらに、胎盤を介して母犬から子犬に感染する経路もあります。
 予防には定期的な駆虫薬の投与が効果的です。また、生肉を与えないこと、排泄物を速やかに処理すること、定期的な健康診断を受けることも重要です。人獣共通感染症の原因となる寄生虫もあるため、動物たちの健康管理はご家族の健康を守ることにもつながります。

内部寄生虫が犬猫にもたらす症状について

  • 食欲がなくなる
  • 下痢
  • 嘔吐
  • 体重減少
  • 腹痛
  • 貧血
  • お腹のふくらみ
  • 発育が遅い(子犬・子猫)
  • 便に虫が出ている、肛門付近に虫がついている

予防薬の種類

 おやつタイプのお薬(チュアブル)や、皮膚に塗布するタイプのお薬(スポット)があります。性格や好み、予防できる寄生虫の種類の範囲によっておすすめできるお薬が異なりますので、どのタイプのお薬が合っているか主治医と決めていきましょう。

チュアブルタイプ

メリット :おやつ感覚で与えることが出来る
      投与後であってもシャンプーが出来る
デメリット:経口での投薬が困難な場合には不向き
      吸血されないと効果が発揮されない
      食物アレルギーがあると食べられないことがある

スポットタイプ

メリット :皮膚に塗布するだけなので簡単に出来る
      好き嫌いがあっておやつタイプや錠剤タイプを食べない子にも投薬できる
デメリット:塗布部に皮膚炎を発症することがある
      シャンプーや雨に濡れると効果が減弱することがある

寄生虫の予防について

 ノミ・マダニは、ほぼ一年を通じて生息しており、予防薬の通年投与を推奨しています。どのタイプのお薬が合っているか主治医と決めていきましょう。
※ノミ・マダニは、ほぼ一年を通じて生息しており、予防薬の通年投与を推奨しています。

当院で取り扱いのある予防薬一覧

予防薬 タイプ フィラリア 内部寄生虫 ノミ マダニ
ネクスガード(犬) キューブ型 お肉味 × ×
ネクスガードスペクトラ(犬) キューブ型 お肉味
ネクスガードキャットコンボ(猫) スポットタイプ
アドボケート(犬猫) スポットタイプ
レボリューション(犬) スポットタイプ ×
レボリューションプラス(猫) スポットタイプ
フロントラインプラス(犬猫) スポットタイプ × ×
プロハート(犬) 注射タイプ
(1年間)
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